3,宝 塚 古 墳




○あらまし
  宝塚古墳群は松阪市のほぼ中央に位置し、南北1q、東西1.25km
の丘陵地一帯に築造された古墳群である。  昭和3年の鈴木敏雄氏の
踏査によれば88基の古墳が存在していたが、周辺地域は住宅地に造
成され、現在はわずかに1、2、4号墳の3基が残存するのみである。こ
のうち1号墳、2号墳で発掘調査が行われた。

○古墳の形成時代と埋葬者
  1号墳は今から約1600年前の古墳時代中期(五世紀初頭)に造ら
れた伊勢地方最大の前方後円墳で、伊勢湾西岸の広い範囲に影響を
及ぼしていた王の墓と推定される。王が誰なのかは現段階ではわかっ
ていないが、ヤマト政権がその勢力を拡大する時期であり、この地方を
任されていた重要人物と思われる。2号墳は5世紀前半の築造で被葬
者は1号墳の後継者と推定されている。

宝塚1号墳
○古墳の構造
 平成11年から始まった史跡整備事業による発掘調査で1号墳は全長111m、後円部径は75m、高さは11
m、前方部は幅66m高さ7mであることが判明した。また1号墳の「前方部」の北側に「祭祀場」である造り出し
が東西18m、南北16mの大きさで確認され、古墳と祭祀場をつなぐ、全国初となる土橋(幅3m、長さ5m)を
もつことが判明されている。
  2号墳は全長89m、後円部径83m、高さ10.5m、前方部の幅38m、高さ3mの帆立貝形の前方後円墳
であることが判明した。



○出土埴輪

  1号墳から出土した埴輪は円筒埴輪、楕円筒埴輪、壺形埴輪朝顔形
埴輪、蓋形埴輪、家形埴輪、船形埴輪、囲形埴輪、盾形埴輪靱形埴輪、
冠形埴輪、甲冑形埴輪、鳥形埴輪など様々な埴輪類約140点がほぼ
埋設された状態のまま出土した。
  平成12年にこの古墳から出土した船形埴輪は全長140p、高さ90
pで、全国にある40数基ある中でも最大であり、船上に太刀、杖、蓋
という立ち飾りがあることが特徴である。立ち飾りは王の権威を象徴す
るもので、この埴輪は宝塚古墳に眠る王の船といわれている。この埴
輪の材質は粘土質の土だけでなく、粗い石英などを混ぜて焼いてあり
工人らの工夫のあとがみられる。
  船形埴輪は平成18年3月に国の重要文化財に指定され、現在ほか
の埴輪とともに松阪市文化財センターに保存展示されている。


船形埴輪

○現在の様子


  1号墳、2号墳とも発掘調査は終わっているが、古墳の中央部は発掘されなかったため、副葬品など古代のロ
マンが昔のまま地表約1mの下に眠っている。また被埋葬者が誰なのかも、今後の研究のテーマである。
  平成17年4月に古墳公園して開園され、近くに駐車場も完備されている。
○所在地
  ・三重県松阪市宝塚町・光町